
右手と左手は形がそっくりなのに、重ね合わせるとぴったり合いません。まるで鏡にうつした姿どうしのような関係です。じつは、物をつくっている小さな粒「分子」にも、これと同じ関係のものがあります。にているのに重ならない、こうした分子のなかまを「鏡像異性体(きょうぞういせいたい)」とよびます。

右手と左手は、指の数もならび方も同じです。でも右手用の手袋を左手にはめようとすると、うまく入りません。パーツは全部同じなのに、組み合わさり方だけが逆になっているからです。この「似ているのに重ならない」性質を、むずかしい言葉で『キラル』といいます。鏡のような分子も、まったく同じしくみでできています。

分子は、もっと小さな粒「原子」がつながってできています。まんなかの炭素という原子に、4つのちがう原子やかたまりがつながると、右手型と左手型の2種類ができます。つなぎ方の順番は同じでも、空間でのならび方が鏡うつしになるのです。どちらも同じ材料でできているのに、ぴったり重ねることはできません。